BUMP OF CHICKENの楽器隊が好きという話

私はバンプの演奏が好きだ。

楽器の演奏ができる人たちの中では技術が過小評価されがちなところはあるが、様々なバンドがある中トップレベルで楽曲の世界観の表現が研ぎ澄まされて安定している、表現力の高いバンドだと思っている。

そんなBUMP OF CHICKENの楽器隊の演奏のそれぞれの何が好きかという話を、専門用語とか技術とかはよく分からないが書きたい。

 

 ギター:藤原基央

藤くんの奏でるギターの音色は一音だけで世界観が伝わってくる。

バンドによっては世界観よりは聴いて乗れるか、盛り上がるかが優先的になっていると思う。

しかし、バンプに関しては”人間の感情”だけではなく、

 

asgard

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midgard

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この二つのように神話の世界を表現がされていてしつこくない音色を作っている。

いわゆるアルペジオという奏法で、一音一音の響き、余韻が大切にされている。

藤くんはゲーム、テイルズシリーズやFFなどのゲーム音楽も子供の頃から好んで聴き育ち、それぞれの世界観からギターの表現が遺伝しているのだと思う。

 

また、インディーズ時の『FLAME VEIN』収録の楽曲でギターイントロが印象的なものも多い。ライブ定番曲『ガラスのブルース』を始め、

 

くだらない唄

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リトルブレイバー

リトルブレイバー

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ナイフ

ナイフ

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『ナイフ』のようなグランジかぶれな渋いギターフレーズはまっすぐと堂々としていてカッコいい。

次に紹介する増川弘明のギターとの組み合わせは下手とかどうでも良い。とにかく組み合わせが気持ち良い。

 

バンプのギターフレーズで一番印象的な楽曲で言えば外せないのはやはり『天体観測』だ。


BUMP OF CHICKEN「天体観測」

 

盛り上がっていくフレーズがイントロから繰り返され、リズムも疾走感があり少年のような若々しい少年心を感じる。

2000年代のギターロックのイントロで一番世界観、感情を表現しているギターフレーズだと思う。

 

難易度には差があれどキャッチ―さと表現力にはエリック・クラプトンLaylaに匹敵すると私は思う。そのギターの音色からは確かな葛藤を感じる。

 

また、ダンデライオン』『車輪の唄』ではアルペジオが印象的なジャンル、カントリーでのアプローチがされ歌詞の世界観にぴったりのジャンルを用いていてとにかく歌詞との相性がぴったりの表現をしている。

 

その後はバンドサウンドとして力強いフレーズが収録されたユグドラシルOrbital Period』でギターロックを完全に我が物にし、数多くの人々をロックの虜にしたことは間違いないだろう。


BUMP OF CHICKEN「オンリー ロンリー グローリー」


BUMP OF CHICKEN「sailing day」


BUMP OF CHICKEN「涙のふるさと」

 

特にギターで複雑さを追及されたのは7枚目のアルバム、『COSMONAUT』だろう。


BUMP OF CHICKEN「三ツ星カルテット」

 

透明飛行船

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 荒っぽさが緩和されクリアになった楽曲にシフトし、それでいてそれぞれの楽器の組み合わせの複雑さがクセになり、ファンの間では好きなアルバムに『COSMONAUT』を上げる人も少なくない。

 

『COSMONAUT』以降重たいギターサウンドは減っていくが『友達の唄』『firefly』

 『Butterfly』『シリウス』『話がしたいよ』。

どれもギター弦の弾かれる余韻に浸れるものばかりだ。

『月虹』ではケルト音楽をロックに仕上げていて表現の追及が一切尽きる気配はない。

 

藤くんは『東京賛歌』、『歩く幽霊』ではハーモニカもやっていてギターとの相性が良く暖かい空気を再現している。

 また、マンドリン、ブズーキ等も楽曲に合わせてギターに限らず表現を追求し様々な楽器も演奏している。

 

藤くんの話が長くなってしまった。

 

 ギター:増川弘明

 彼の話もしよう。

かつてはギターの練習で悩み収録をサボり藤くんを怒らせてユグドラシルでは演奏した楽曲が少ないようだが。それ以降は整頓されて藤くんの表現を再現しようとストイックな姿勢が伝わってくる。

 

特に印象的なのは『才悩人応援歌』だ。

才悩人応援歌

才悩人応援歌

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CD音源でというよりライブでの演奏が気持ちが良かった。

ヒロの演奏の中ではトップに入るテンポの速い曲じゃないだろうか?

立ち位置的にはリズムギター担当。

 

藤くんの一定のテンポのギターに対してそれを強調させる組み合わせ方が彼らの関係性を感じる。

ボーカルが歌い方が合って、その心境を語るの音色で表現しているのが『supernova』だったり、


BUMP OF CHICKEN「supernova」

 

一定の力で優しく寄り添う『花の名』、


BUMP OF CHICKEN「花の名」

 

『flyby』での藤くんのギターの隙間に入り込んで面白い組み合わせが発生しているのはこの二人の関係、時間が無ければ簡単には真似できないはずだ。

 

flyby

flyby

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ライブのガラスのブルースは必見だ。

 

派手なパフォーマンスはないものの楽曲を印象付けるフレーズを引いているのは増川弘明という事は見逃しちゃいけないだろう。

そしてその派手さが無いことによって一曲一曲が整頓されて主張しすぎないのが何度も聴きたくなる一つの理由だろう。

 

ヒロは話をまとめるのは得意ではないが。

 

 ベース:直井由文

どの楽器も欠かせないが楽曲によって”刺々しい曲”では鋭さを緩和させる役割があり、”バラード”ではボーカルに寄り添ってを強調するのに一番重要な奏者だと思う。

ベースは低音が特徴だ。

バンプでは特に激しい演奏は少ないだろう。

ハンマーソングと痛みの塔

ハンマーソングと痛みの塔

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意識せずに聴いていればどの音がベースなのか分からない人もいるかもしれない。

しかしその主張が抑えられているのは歌に寄り添い尊重していると思う。

 

よく耳を澄ませてみるとギターの鋭い演奏を和らげて、藤原基央の厳しい現実を見せながらも聴く人たちを支えようとする感情を成立させている。

時空かくれんぼ

時空かくれんぼ

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ヒロのギターと藤くんのボーカルと合わさることによって楽曲の存在を持ち上げているのはベースだ。

 

とはいっても筆者は意識し始めたのは結構遅く、ベースで一番好きなのが『ray』だ。


BUMP OF CHICKEN「ray」

 

歌前の柔らかいベースラインは不思議な高揚感がある。

安定した力でじっくり弾いているからこそのぬくもりがあると思う。

 

恐らくそういう部分に惹かれ、RADWIMPS野田洋次郎がプロデュースしたChara『ラブラドール』チャマを選んだのだと思う。


Chara - ラブラドール

 

『アリア』も好きだ。


BUMP OF CHICKEN「アリア」

ゆったりした歌に対して意外と序盤は結構小刻みな演奏だが前半にあるおかげで後半の低音のベースラインの余韻が聴いていて気持ちを緩和させてくれる。

 

そして新曲の『Gravity』で特に主張が強くなった。


BUMP OF CHICKEN「Gravity」

 

この楽曲で改めてかけがえのない楽器だという事は感じた。

一定のテンポ、一定の力で弾かれる音色が他の変化していく楽器隊の演奏を支えていることは言うまでもないだろう。低音は響きやすいからこそなくなると他の演奏が強調されて結構つまらなさを感じてしまうだろう。

 

そして、ライブでのMCは彼なしでは進まない。

とにかく感極まる藤くん、話がまとまらないヒロ、しゃべらない男梅

一番会場の空気を支えるベースになっている。演奏とはまるで違いテンションが高い。

そして、いつでもメンバーに、ファンに寄り添っている。

 

 ドラム:升秀夫

他の楽器のリズム、メロディ、テンションを支えている親分のような存在。

力強すぎず的確で柔らかいヒデちゃんのドラムは安心感がある。

楽曲の展開に合わせて変化させていく表情からはまるで伺えないテンションのギャップは彼のストイックさゆえだろう(?)。

アルエ

アルエ

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特に『Stage of the ground』ではベースと魅せるリズムは隙が無く一歩一歩進んでいくようで楽曲のコンセプトを見事に再現している。


BUMP OF CHICKEN「Stage of the ground」

 

時にはテーマが重たい楽曲では弱さを支えるような、崩れないように物語を進ませるような力を発揮する。


BUMP OF CHICKEN「supernova」

 

感情的でないがゆえに押し付けすぎない軽快な足取り、リズムがバンドの楽曲を一つにまとめているのがドラムだ。

 

ドラムで一番好きなのだと初めて聴いた当時衝撃を受けた『firefly』だ。


BUMP OF CHICKEN「firefly」

 

結構シンプルな演奏だが、間奏のラストに向けてのバスドラムの一定のリズムとシンバルの組み合わせの躍動感ある演奏が好きだ。

また歌の一節一節の語尾に軽快にドラムが撃ち込まれることによって後半に向かって高揚感をじっくりと上げていくのもこの楽曲の魅力だ。

 

ライブでは後ろから彼らを見守っていて安心感を与えている人物だ。

ラジオではとぼけた発言をしてライブでの姿勢と比べてギャップがあるのも見逃せない。

 

 

 終わりに

四人には”一体感”と言う言葉がまさにぴったりだ。

お互いにお互いを尊重するように緻密に音の隙間を縫い合わせて、楽曲の歌詞はもちろん世界観心情音源化しているのはそう簡単な事じゃない。

整った温度感。聴いても押しつけがましくない落ち着いた演奏。

派手ではないからこそ隠れた音に集中して聞きたくなる瞬間がある。

クセになるリズム、すっと”言葉通り”に入ってくるメロディ。

 

それらを感じられるのは歌だけでは成立せず、楽器隊の存在ありきであることは間違いない。

そして、四人の関係性があるからこそ歌詞のや世界観の説得力が強くなっていると思う。

 

だから私はBUMP OF CHICKENの四人の織りなす音楽が好きだ。

 

しかしまた、人によってバンドの人柄というフィルターがあって見えなくてもいいものが見えてしまうモノがあることも事実だろう。

 

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