amazarashi『とどめを刺して』から読み解く変化。

これまで一人称で苦痛を嘆いて、救いの手、光の筋を見せる希望を歌ってきたamazarashiの視点の変化を感じた。

 


amazarashi 『とどめを刺して』Music Video

 

この曲に出てくる『君』とは、失望をしている『彼女』。

 

Aメロではそのテーマが表現され、その『失望』=『彼女』を引きづりながら、逃げようとする逃走劇が想像できる。

 

そして、タイトル通り、苦しみ、辛いを感じる現状に対して『とどめを刺して』と歌っている。

 

この通り、これまでのamazarashiにはなかった、苦しいと感じている視点が自分ではなく、『君』という二人称になっている。

その『君』とともにその『失望』を共に取っ払おうと自分自身ではなく、『君』に願っているのだ。

 

~♪ ねえ 二度と泣かないように

~♪ 君を脅す君にとどめを刺して/~♪ 君を見縊る君にとどめを刺して/~♪ 君を虐める君にとどめを刺して

~♪ 僕と逃げよう

 

まるで『彼女』が不安症、自己肯定感が低いことであるような事が分かる。

 

amazarashiはこれまで辛い、苦しいを歌い、逃げよう逃げようとすることが歌われてきた。

人間の暗い部分、残酷でみっともない現実、社会問題。

卑屈を卑屈な言葉で浮き彫りにしてきた。

もう仕方がないから文句を言おう、どうしようもないかのような楽曲が多かった。

 

しかし『あんたへ』や『フィロソフィー』のように苦しんで生きてきたことを肯定してくれる楽曲もあった。

 

今回の楽曲はそのメッセージ性とは違い、amazarashiが主観的ではなく、第三者として伝えようとしていることが感じられた。

 

人は時々、不安になり他人の目を気にして「嫌われているんじゃないかな」「みんなと同じじゃないといけないよね」と思い込んで行動が狭められて窮屈に生きてしまうことがある。

 

しかし、この曲はその窮屈になっている性格をまさにこの曲に出てくる”パラノイア”的考えを取っ払う事を促すような歌になっている。

 

これまでは、あっても苦痛を肯定することが音楽のテーマとして主に多かった秋田ひろむの詩世界。

 

経験や感情を抱え込んで進んでいく事を歌っていたamazarashiとしては新しい切り口。

 

タイトル通り、苦しみ、辛い、鬱屈としていたそれらに『とどめを刺して』と歌ったのだ。

 

そして、その先に何があるのか、そうすることによってどうなれるか。

 

~♪ ねえ カーラジオのボリュームを上げて

    ねえ もっと上げて

  最高の気分なんだ 笑いが止まらない

  どこまでも行けそうだ どこまでも行けそうだ ~♪

 

まるで自由にでもなれると言わんばかりに叫んで(歌って)いる。

 

この曲が歌っていること、それが何かはもうお分かりだろう。

 

自分を窮屈にさせている正体は何か。

歌詞では『~♪ 何かに追われてるような気分に追われてた』と歌っている。

『何か』であって正体が分かっていなかった。

その『何か』とは自分、自分自身で作った思い込みだと最後には結論が提示される。

 

その思い込みや正体不明に膨れ上がった劣等感を取っ払う事によって身動きが楽になるという事を歌っている。

そして、過去にもこのような楽曲があった。

それが、『とどめを刺して』というタイトルと似たような意味を持った歌詞『~♪ 虚実を切り裂いて』という歌い出しの『空に唄えば』である。

 

ただただ、憂鬱を歌っているばかりではなく、憂鬱から抜け出すことを歌っているのはamazarashiとしては珍しいだろう。

 

『とどめを刺して』は今月の3月11日に発売されるニューアルバム『ボイコット』に収録されている。また、先行配信している『未来になれなかった全ての夜に』も収録される。

ボイコット (初回生産限定盤A) (Blu-ray Disc付) (特典なし)

ボイコット (初回生産限定盤A) (Blu-ray Disc付) (特典なし)

  • アーティスト:amazarashi
  • 発売日: 2020/03/11
  • メディア: CD
 

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ボイコット

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  • amazarashi
  • ロック

 

新たな肯定の形を提示したamazarashiの変化がきっと感じられることだろう。

 

 おまとめ&さいごに

暗雲たる楽曲があるからこそ、こういう楽曲が背中を押す力が強く伝わってくる。僕はそう感じた。

 

このamazarashiの心理の追求と哲学の成長と変化を共に生きれることが嬉しい。

そしてともに僕も成長していける。

 

無理やり自分を変えようとして苦痛を感じていたことが僕にはある。しかし、音楽がそれらを肯定してくれた。だから僕は音楽を聴く。まあ、それらはまた別のお話。

 

まあ、事故らないようには生きよう。

 

苦痛からの逃走劇に決着をつけるのだ。せめて最後は笑っているため。

 

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