④入門:米津玄師のジャンルとは? ロック? J-POP?~4thアルバム:『BOOTLEG』編~
いつも拝読ありがとうございます。どうも、傍観梟(ぼうかんふくろう)です。
今回は、米津玄師のジャンルとは?シリーズ4本目は、4thアルバム『BOOTLEG』特集です。
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それでぇは! 4本目であろうと張り切ってどーぞッ!!!
彼が、影響を受けていた音楽性を自分なりに構成し発信し、リスナーからの認識を受け入れ、『BOOTLEG』=『海賊盤』という言葉を使い、先人たちからの影響と自身の音楽性に存在価値を割り切って表現した3作目にしてこれまでより様々なジャンルを取り入れたイロニーとフランクネスを表現した大名盤。
そして、”米津玄師”という音楽性を確立したアルバム。
根底にある王道の日本語ロックをし、ボカロ時代という畑から巣立った一人のミュージシャンとしての”音”、”声”を独自の解釈と、自由さを表ん元したと思う。
ボカロの声を使い、それをまるで楽器のようにしている『砂の惑星』という楽曲。
『YANKEE』、『Bemen』に収録されているボカロで出し、アルバムでセルフカバーしている『ドーナツホール』や、『あたしはゆうれい』とたびたびボカロの声らしき声が楽器のように楽曲中に使用されていた。
それから、『飛燕』、『かいじゅうのマーチ』、『Nightawks』の王道ロック調の転回、進行。
『Nightawks』に関しては、今まで自身が聴いてきたバンドを意識したという事も雑誌にて語っており、間奏部分にはBUMP OF CHICKENの『天体観測』のイントロを流したかったとも語っていた。しかし、期限に版権が取れなかったという事で出来なかったらしい。
曲調は、ASIAN KUNG-FU GENERATIONや前述している通りBUMP OF CHICKENのような日本のミクスチャーロック、オルタナティブロックのパターンが参考にされている。その自身を成長させてくれた日本のロックバンドに対するリスペクト的な意味合いを感じる楽曲である。
『LOSER』と『砂の惑星』ではラップやヒップホップ調の音楽性が濃く出ている。『LOSER』では自身の事を歌っているが、
”~♪ 長い前髪で前が見えねえ(”まえがみ”で、”まえがみ”えねえ)”
と韻を踏んでくるのにはやはり米津玄師の感覚はすごいなと思った。
そして『春雷』、『爱丽丝(ありす)』のようなリズミカルで攻撃的でハイテンポの楽曲。
RADWIMPSからの影響を大きく感じる。特に『おしゃかしゃま』や『DADA』ぽいと思う。
しかし、明らかに違うのが、歌詞の言葉選びが独特の世界観を作っているという事と、演奏部分は一番から繰り返されていることが多いという事だ。
RADWIMPSは、アメリカのロックバンド、RED HOT CHILLIPEPPERS(略称:レッチリ)のようなラップロック的な要素が強いが、米津玄師の言葉選びは特に日本人的でリズム感は近く、言葉選びがまるで違う。
そして、それが米津玄師の色と世界観を作っており、中毒性を生んでいるのだろう。
トラップ系、ヒップホップ、ダブステップのような曲調をしているのが、
『Moonlight』、『fogbound』、『ナンバーナイン』、『打上花火』
ドラムの音が印象的な曲調で音も抑えられ、メロウなヒップホップな影響を感じる。
影響としては、彼がオープニングアクトを務めた、カナダ出身のシンガー the weeknd(ザ・ウィークエンド)と、カリフォルニア州出身のKendrick Lamar(ケンドリックラマ―)を組み合わせたようだと思う。
『ナンバーナイン』に関しては、若干、EDMのようなシンセサイザーのサビの盛り上がりがあり、これまでにない新しい表現をされている。メロディーが綺麗で、歌詞は現代の芸術というものについて考えさせられる内容になっている。
『打上花火』に関してはネット発、女性ラッパー、DAOKOさんとのデュエットを再編曲し、セルフカバーをし、原曲とはまるで変った曲調に仕上げられ、ドラムの音と夏を連想させるような金管楽器の音を加えられ、ヒップホップ調になっている。4曲の中で特にJ-POP的な曲であるとも個人的には感じている。
しかし、どれも特色があり、
『Moonlight』では、ボーカルを加工し、地声と加工した歌唱とデュエットをしている表現方法をとっている。
『fogbound』では、ぼんやりとした空気感にさらに女優 池田エライザをコーラスで参加させ、色っぽい雰囲気で夢うつつな浮遊感を低音の音でイギリスのバンド、The XX(ザ・エックスエックス)のドリームポップのような要素を強く感じる。
このアルバムの中でJ-POP的だなと思ったのが、
『ピースサイン』、『orion』、『灰色と青』
うち2曲はタイアップとしてアニメに起用されており、聴きやすい曲調になっている。
『ピースサイン』はアニメ『僕のヒーローアカデミア』の主題歌に起用され、シングル発売し、すぐに通販でも売り切れていたのを覚えている。
曲調はギターの音色がカッコいいバンドサウンドに仕上がっていて、少年漫画にぴったりな疾走感ある熱い青春を感じさせ、2000年以降のオルタナティブロックのカッコよさを提示し、同時にまさに現代のロックバンドのJ-POP的なサビの盛り上がりには彼の研ぎ澄まされた感性の素晴らしさを感じる。
『orion』アニメ、『3月のライオン』のエンディングテーマに起用。
米津玄師の新たな感情表現に驚かされた楽曲だ。
ピアノの沈んでいくようなイントロから始まり、悲壮感のある世界観を表現している。
そして、テーマが冬で、きらきらとした音を取り入れ、景色を音で再現している。
サビでは悲壮感と焦燥感のある感情表現で盛り上がり、
”~♪ 結んで欲しくて”
という祈る言葉の語意にはぐっと心をわしずかむ強さがあり、J-POP的な言葉の並べ方はもちろん、それに合わせた歌唱を繋げていき感情もなぞっていくのには現代のシンガーソングライターのJ-POPのバラードらしさを感じた。
そして、最後の力強い祈りの叫ぶような歌う表現には賞賛の意味で恐怖を感じた。
『灰色と青』憑依型呼ばれ、歌手活動も務める多彩な才能を持った俳優、菅田将暉とのデュエット曲。
テーマは北野武監督、映画『キッズリターン』のような別々の方向に進んでいく親友との友情を描いた歌詞になっている。
曲調はミディアムバラード。
最後になるにつれ悲しく徐々に前に歩いていくような焦燥感の曲調に変わっていき、曲の終わり方は、伴奏がフェイドアウトしていき、この曲はアルバムの最後の曲で、もう一度アルバムを聴きたくさせるような構成になっている。
ダブステップ系のドラムの音が感情の葛藤をうまく表現しており、このアルバムの中で最も感情表現が研ぎ澄まされた楽曲と個人的に感じている。
日本語ロックらしいバラードで、J-POPだと思う。
『BOOTLEG』に関しては様々なジャンルと新しい表現方法をし、J-POPの概念をひっくり返すほどの力があることを感じた。
しかし、このアルバム以上の想像だにしていなかったメロディー、曲調と今までの主体にしていた音の使い方が今後変わっていきます。
続きは明日更新→⑤シングル:1stから7thまでのカップリング編
あとがき
影響を受けた様々な音楽の吸収したのを自分なりのアレンジで成立をさせたジャンルネスなアルバムだった。
全体的にロックバンドのような音楽性を取っ払って、シンガーソングライターらしいボーカルを際立たせた曲が多くなっていた。
特に、ヒップホップ調の曲はそれにあたる。
歌詞が始めから最後まで熱の込め方と、リズム、メロディーに合わせたバランスの取れた言葉選びが前作より格段に上がっていた気がする。
彼自身が、作詞家であり、ボーカリストであることを強調し、プロという立場を明示した作品であった。さらに、ボカロは勿論、DAOKO、池田エライザ、菅田将暉とのコラボがあり、それぞれを違和感のない当然のように一部にしてしまう声の個性を巧みに操る一人の音楽プロデューサーであることをそれぞれの楽曲で断言している。
海外の天才的なアーティストをも吸収していく、彼のスポンジスタイルには、遊び心を感じ、同時に恐ろしさを感じ、更に音楽を楽しませてくれるのだ。
そして、この『BOOTLEG』以降も追及されていく彼の音楽性。音の間、メロディー、リズム、ハーモニー、言葉選び。少しずつ研ぎ澄まされていく。
つづく→⑤
参考:アーティスト
ASIAN KUNG-FU GENERATION - Rewrite (Video Clip)
Red Hot Chili Peppers - Otherside [Official Music Video]
The xx - I Dare You (Official Music Video)
The Weeknd - Can't Feel My Face
参考記事: