【レビュー・考察】YOASOBI 1st EP『THE BOOK』を逆から聴いてみた。

Epilogue(エピローグ)意味:終幕

Prologue(プロローグ)意味:序幕

 

『YOASOBI』を通して最後まで聴くと何点か「?」と思うような点があったが、どれも個性的な楽曲でありながらもEP『THE BOOK』としてパッケージしても、インストを抜いて7曲、タイアップもありながらこのEPの為に作られたような個性豊かながら繋がった表現がされた楽曲達だった。

作品への反応に興味が沸きツイッター上での反応を見ていて興味深いものを見つけたので、収録されている楽曲を一曲目から最後まで聴いた後、曲順を逆にして聴いてみた。その曲順で歌詞に注目し、”物語"としてとらえた上で感想、考察を書いていきたいと思う。

 

Prologue

Prologue

  • YOASOBI
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

インスト曲『Prologue』で始まる。序章を意味し、わずかに喧騒のざわめきが聞こえてくると力強いピアノが進行して楽し気な物語が始まるような曲調だ。

 

夜に駆ける

夜に駆ける

  • YOASOBI
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

2020年に最も再生された楽曲。

この楽曲の歌詞は主人公が共に歩んでいく仲に意識が向いていき、そこで出会う相手の表情に様々な感情を抱いたりぶつかりながらお互いの気持ちに気付いていきそして信じて共に歩んでいこうと、二人で夜に駆けだしていくという物語。友情や恋愛に置き換えられる青春のような甘酸っぱさも感じるドラマチックな楽曲。この主人公とこの相手との出会いからこの物語は始まる。

 

ハルカ

ハルカ

  • YOASOBI
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

そして、次の楽曲では物語は経過し、〈ふりかえれば数え切れない思い出があふれ出してくる〉という回想する描写がある。また、〈前を向いて歩いてそうやって大人になってく〉と『夜に駆ける』とは対照的に俯瞰的な表現があり、成長したように感じる。

しかし、歌詞を見てみると、『夜に駆ける』での一人称の表記が”僕”だったが、『ハルカ』だと”ボク”に変わっていて、『夜に駆ける』の主人公ではなく、共に歩んでいこうとする相手の視点のようにも捉えられ、〈よふけのの祈り いつでも君とともに歩いてきたキセキ/離れた街にも連れ出してくれたね〉という歌詞も共通するような言葉がありアンサーソングのようなものにも思える。

 

群青

群青

  • YOASOBI
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

4曲目では夢を見ている思春期のような強い意志と意地を感じる表現がされ、新しく自分の道へと進もうとする決意が歌われている。視点は第三者から見た『夜に駆ける』の主人公とここでは捉えて話を進めたいと思う。

 

たぶん

たぶん

  • YOASOBI
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

『たぶん』では一人称は”僕”に移り、やはり『夜に駆ける』の主人公と捉えられる。

この楽曲では二人は別れ、主人公が〈悪いのは誰だ わかんないよ/二人で過ごした日々の当たり前がまだ残っている〉と二人で過ごした日々に思いふけている。失恋楽曲だ。

曲調も中でもゆったりとして、どこか遠い気持ちになっている。

 

あの夢をなぞって

あの夢をなぞって

  • YOASOBI
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

『たぶん』で別れた二人、主人公の思い出に残る、〈音の無い二人だけの世界で 聞こえた言葉は「好きだよ」〉から〈どうやったって 忘れられない君の言葉/君からの言葉 あの未来で待っているよ〉と二人にまだ期待するような心が歌われている。

 

ハルジオン

ハルジオン

  • YOASOBI
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

他の楽曲とは違い、大人びた口調に変わり、一人称は”私”、二人称には”あなた”と使われている。

『あの夢をなぞって』で歌われている〈「好きだよ」〉を『ハルジオン』では〈あなたが好きだと言ってくれた私〉と歌っていて、どの曲とも違い、大幅に成長した性格に変わっている。

曲の終わりには〈戻れない日々の続きを歩いていくんだ/あの日の二人に手を振れば 確かに動き出した未来へ〉と『群青』とはまた違い、主人公が前向きに次の未来を描きだそうとする景色が浮かぶ。

 

アンコール

アンコール

  • YOASOBI
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

全ての楽曲の物語をまとめるようなエンディングテーマとも捉えられる。

〈君にはもう会えないんだって/その時まで何度でもずっと好きな音を鳴らそう/ここは夜のない世界/そんな日にあなたに出会った/そしてまたひとり/あの日々をただ思い返す/忘れられないメロディーも今日でさよなら〉

回想し、そして決別するように願う言葉に、

冒頭でも繰り返していた〈明日世界は終わるんだって〉を最後にも繰り返し、〈もしも世界が終わらなくって〉と〈明日がやって来たなら、ねえ、その時は二人一緒に なんて〉と、やはり未練があるような言葉を残し曲は終わる。

 

Epilogue

Epilogue

  • YOASOBI
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

『Prologue』同様にインストで、ピアノの静かに物語の終わりを告げるような、けれどまだ続きがあるような明るいメロディだ。

 

そして、この楽曲が流れた後に、正式な『THE BOOK』の『Epilogue』から始まる曲順で聴くと、主人公が新たな人生を歩んでいき、まさに”アンコール”を始め、逆の曲順だと物語は別れるような展開を見せたが、新たな出会いと希望のある展開で進んでいき、まるで違ったストーリーを見せて二通りの面白い性格を見せてくれた。そしてやっと一曲目が『アンコール』が配置されているのかという事に納得できる。

 

簡単な考察をしてきたが、少しというかかなり強引な物語の繋げ合わせ方をしたと思っている。しかし、どの楽曲も世界観、主人公の表情には共通する点があり計7曲は一つの物語、短編小説、それぞれ同じ主人公、またもう一人の相棒視点のある物語に思えて面白かったし、一つの恋愛長編小説を読んだ気持ちになった。曲順を逆にした30分に続けて改めて本来の一曲目から聴いて60分の物語も体験してみて欲しい。

 

 余談

(本編読んだら他の情報興味なければ読まなくても良いです。)

実際、小説投稿サイトの作品と、『ハルカ』では鈴木おさむが書いた小説を原作に楽曲を制作しているようだ。

 

物語の構成として、似た表現する小説家、伊坂幸太郎作品、

フィッシュストーリー

フィッシュストーリー

 

 

EPだが、コンセプト作品としては米津玄師の1stアルバム『diorama』にも似ているとも感じた。

diorama

diorama

  • アーティスト:米津玄師
  • 発売日: 2017/07/05
  • メディア: CD
 

 

また、歌詞の名詞、主語の使いまわしにおいては物語の断片をなぞるような歌詞がスピッツの表現とも近いものを感じた。

CYCLE HIT 2006-2017 Spitz Complete Single Collection(通常盤)

CYCLE HIT 2006-2017 Spitz Complete Single Collection(通常盤)

  • アーティスト:スピッツ
  • 発売日: 2017/07/05
  • メディア: CD
 

 

そんなところ。