Childish Gambinoのニューアルバム『3.15.20』レビュー
『Redbone』でノミネート、『This Is America』でグラミー賞を獲得した俳優、ドナルド・グローヴァ―(Donald Glover)としても活躍しながらラッパー、シンガーソングライターとして活躍するチャイルディッシュ・ガンビーノ(Childish Gambino)の本日、15日よりカウントダウンされ発表され、22日に正式に発表されたアルバム『3.15.20』についてレビューします。
また、筆者は英語の意味は基本解読ができない人間なので歌詞の考察はできないという事についてはご容赦をお願いします。あと情報が足らなかったらすみません。
このアルバムはドナルドグローヴァ―プレゼンツ名義でアルバムの1曲目から最後まで通しでYouTubeにて公開されている。もちろん無料である。
Donald Glover Presents - 3.15.20
また、アルバム収録されている楽曲タイトルは2曲目、3曲目以外はアルバム開始からカウントした時間がタイトルになっている。
ほいでは今日も張り切って!!! どうぞ!!!!!
1、『0.00』
シンセのボーンという低音の音をバックに、加工された
『~♪ We are We are We are…』と繰り返し流れてくるといった『We are』という言葉の意味を想像させられるアルバムのオープニング曲。
この時点で良いアルバムだと期待させられる。
また、チャイルディッシュガンビーノが何か意味深な表現を繰り出そうとしていることが分かる。
2、『Algorhythm』
ダークな世界観をイントロから表している。
ボーカルを引き立てて打ち込みとノイジーな雰囲気とダークネスな世界観が特徴的なチャイルディッシュガンビーノ。
イントロのピコピコ音とドラムの反響音がSF映画のディストピア的な世界観を感じる。
これまでの楽曲でも多かったが、リスナーに印象を残す部分として低音が肝な楽曲。
まだ2曲目にして恐ろしいほどにアルバムの表情を表している楽曲だろう。
最後のクラップがリスナーに畳みかけるように、そして、混とんとリズムが絡み合う。それはまるでアルゴリズムが崩れるかのように。そして、子供の声のようなのが数回入る。何を表すのか…?
決して明るさは感じない。
3、『Time』
予想外なことに爽やかに仕上がっている楽曲。
しかし、ビート感がヒップホップのそれで独特な世界観をかもしている。
打ち込みの音の主張が強く、聴いたことのないタイプで正直自分は戸惑いました。
ドナルドグローヴァ―はこういう曲を作る人間だと言い聞かせてどうにか自分を納得させようとした。
ダメでした。
最後の夏虫の鳴き声は何だ…。
4、『12.38』
やっと聴きやすいヒップホップ曲である。
ケンドリックラマ―の楽曲たちとタイプは近いだろう。
しかし、静かに漂わせる不穏さがこちらの方が強い。
盛り上がり過ぎず、漂わせてリスナーの気持ちだけをもてあそぶようなグルーヴがズルいくらいに癖になる。
5、『19.10』
テンポ感が軽やかな印象。
歌のメロディは癖になる。ヒップホップというよりもファンク的な質を結構感じた。
打ち込みのドラムとシンセのリズムの組み合わせが絶妙にマッチしたりずらしたりされてブラックミュージック的要素が強い。
6、『24.19』
Grimesのようなエクスペリメンタルな作りにソウルテイストのボーカルで、楽曲としてはこの曲も聴きやすかった。
しかし、予測できない展開に戸惑わされる。それぞれ近い世界観で、一曲の中で変化していくさまが恐ろしい…。
7、『32.22』
エクスペリメンタル要素は同じく、打ち込みで基本構成され、複雑なリズムに加工されたボーカルで世界観が構成されている。
ある種の民族音楽のようなのに近いだろうか。前半はそんな印象があった。
恐ろしいことに、動物主に猿(?)や鳥、牛の鳴き声が含まれていて表現したいのが人間社会と自然社会との関係性なのか…?
これまた混とんとしたノイジーな音像が印象的で独自の世界観である…。
8、『35.31』
ギターの軽やかな音色で始まり、ヒップホップを基調としていて複雑な楽曲ではない。
時々『32.22』の続きとして動物の存在がうかがえる。世界観がやはりつながっているのだろう。
エクスペリメンタル…!
9、『39.28』
ブルース、ソウル要素が濃くピアノが進行し特にシンプルな楽曲。
10、『42.26』(2018年発表の先行シングル『Summer Pack』)
いたって一番ポップスに当てはまった楽曲。
しかし、ブラックミュージックとエクスペリメンタル要素が混ぜられていて一般的な楽曲の性質とは少し離れている。
聴きにくいわけではないが、受け止め方が難しい楽曲。
11、『47.48』
この曲もエクスペリメンタルな楽曲。
ヒップホップを基調として、ブラックミュージック要素も感じる。
ダークネス過ぎないが明るいわけではなく実験的に聴こえるが楽曲のフェイドアウトが一曲の構成を簡潔にしている。
12、『53.49』
最後の曲にしてテンポ感が明るい楽曲。
ヒップホップ。
チャイルディッシュ・ガンビーノの特徴的な掠れたシャウトボイスが良い。
ブレスや様々なボイスサンプルでリズムを構成していて楽器ももちろん入っているが新しい表現が心地いい。
映画のエンドロールで時々ある攻撃的な歌のような印象。
ヒップホップという風に収めるのには僕じゃあまりにも言葉が足らなく、情けないが、独特なブラックミュージックの要素を盛り込んでこれまでにないがソウルだったりジャズ、ヒップホップ要素がエクスペリメンタルに落とし込まれ独特な楽曲である。
まとめ
総合的にアルバムとしてのテーマがなんなのかは分からないがチャイルディッシュガンビーノの主にやってきたジャンルであるヒップホップやブラックミュージックを軸として、打ち込みの多様性が盛り込まれ、一曲一曲変化をして終わり、エクスペリメンタル調な構成になっておりGrimesのような音楽性にヒップホップとレニークラヴィッツのブラックミュージック、主にソウルフルな表現がボーカルから強く感じられた。
『Redbone』でも印象的だったボーカルのシャウトが多用され、独自の世界観を声でも表現されていることは間違いないが、それぞれの楽曲の構成が明るいわけではないダークネスからディストピアなオーラを感じた。
どうしても英語が分からないから具体的に何を歌っているのかわからず悔しい。
しかし、楽曲の空気感は明らかにぼんやりとして具体的ではなく表現されており、皮肉が込められているというようなオーラを感じた。
『This Is America』でも表現されたが、社会問題への訴えがあるような気もするし、建物で盛んな街をテーマにせず、動物の登場により、自然やそれらに近い環境を表現したのは明らかである。
誰か前曲邦訳を求む。
正直、日本の音楽性もこのような皮肉を込めた楽曲の登場も増えてきているしノイズロックやエクスペリエンスチックな展開も最近は見受けられる。
King GnuやGEZAN。
暗いが社会問題へ視点を向けていることは明らかだ。
今後日本もこのような傾向が現代社会人達に未来への意識がどう変えられるかが音楽の方向として重要になってくる気がする。
堅苦しくなり過ぎないことだけは祈ろう。
『19.10』はなんかお化けが出てきそうで怖い。アウトロが。でも好き。日本ぽいじゃん。
参考記事: