【小説レビュー】第27回電撃小説大賞《選考委員奨励賞》受賞作!川崎七音『ぼくらが死神に祈る日』

 

第22回電撃小説大賞、大賞受賞作『ただそれだけでよかったんです』の松村涼哉推薦

 ――尽きない「欲望」、限りある「寿命」。僕らはいつだって選択を繰り返している。眩い理想に届かずもがくとき、きっと彼らの決断が心に刺さる。

 

第27回電撃小説大賞《選考委員奨励賞》受賞作!川崎七音『ぼくらが死神に祈る日』。

教会跡地の神様に寿命と引き換えに願いを叶える者達の限られた時間の使い方を問う物語。

 

 紹介文

第27回電撃小説大賞で、応募総数4,355作品から受賞した青春ホラー


“教会跡地の神様”って知ってる? 大切なものを差し出して祈るの――。
突然の事故で姉を失った高校生の田越作楽。悲しみにくれる葬儀の日、それと出会う。
「契約すれば死者をも蘇らせる」
“神様”の正体は、人の寿命を対価に願いを叶える“死神”だった。
余命4ヶ月。寿命のほとんどを差し出し姉を取り戻した作楽だが、その世界はやがて歪み始める。
かつての面影を失った姉。嘲笑う死神。苦悩の果て、ある決断をした作楽に、人生最後の日が訪れる――。
松村涼哉も激賞! 第27回電撃小説大賞で応募総数4,355作品から《選考委員奨励賞》に選ばれた青春ホラー。

 

 ストーリー(ネタバレ)

田越作楽は自分よりも顔も広く様々な人から慕われ、家族からも愛されている姉の葉月を交通事故で無くし葬式に出向いていた。

そんなある日、目の前にモーンガータというのが現れる。

彼の正体は作楽が高校受験の前の日に葉月と一緒に合格を祈った教会跡地の神様だった。

彼は寿命と引き換えに願いを叶えるという。

それに対し事故で葉月を無くしてしまったことに対し葉月の命の方が重いと自分の方が死んだほうが良かったと罪悪感を抱いていた作楽は自分の寿命と引き換えに葉月を生き返らせる事をお願い、自分の寿命を4ヶ月残し葉月は何もなかったかのように世界は辻褄が合うように改竄され、葉月が事故で死んだという事は無かったことになる。

しかし、事故によって不安が残る葉月は追い込まれて学校には通うことが出来なくなります。

そんな中作楽は葉月に憧れ、葉月の行ってきた事を真似して葉月から本を借りたりして哲学書などを読んでいきます。

 

作楽は学校である事に気付きます。

自分と同じようにモーンガータを利用した者が存在するという事に。そしてそれが一人ではなく、二人。

一人はいじめを受けて別のクラスに移動するように祈った冨士見という少女。そして、もう一人は目立ちたがりの少女。

その少女たちと出会い、モーンガータを利用したことにより他者がモーンガータを利用した時の影響が薄くなっていた作楽は、寿命を代償にしてモーンガータを利用する少女たちを姉の真似をして”人を助けていく”事を決意していた作楽は解決していく。

 

ある日、作楽の変化に気付いていた葉月は作楽の秘密を知り作楽の予想もしてなかった展開が起こっていく。

そして、最後に作楽が獲得し、気付く”命の重さ”とは――

 

 感想

教会跡地の神様、モーンガータに祈った者達に気付いた作楽が行動を起こしてモーンガータの能力によって影響を受けた様々な事に挑んでいく展開は素晴らしく勇気を与えられるきっかけに読んでみて良い作品だと思いました。

作楽は葉月に劣等感を抱いているんですが、その心情の表現が足らなく感情の濃さはあまり感じないなと思いました。ストーリーの展開も感情表現は削られているような感じもして少し簡素な内容に感じましたが、300ページ以内に収まる内容にしては展開が多いので分かりやすく面白かったです。

細かい伏線が貼って複雑になっているような作品ではないので読書初心者でも気軽に読める作品です。

 

個人的に、欲しい物を手に入れるために寿命を差し出すというテーマに僕の大好きなデスノートを連想させられました。作楽がモーンガータを死神と呼ぶところや、最後に作楽からお願いされた時の反応も(笑)

そして、時間は有限。この言葉はやはりどの作品に出て来ても気付かされるものがありますね。 

 

 

今度はなにを読もう……?