【読書レビュー】#野﨑まど:著 『タイタン』レビュー「仕事とは何だ?」

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――――仕事とは? 


 

 

 

 作品の概要

至高のAI『タイタン』により、社会が平和に保たれた未来。

人類は《仕事》から解放され、自由を謳歌していた。

しかし、心理学を趣味とする内匠成果のもとを訪れた、

世界でほんの一握りの《就労者》ナレインが彼女に告げる。

「貴方に《仕事》を頼みたい」

彼女に託された《仕事》は、突如として機能不全に陥ったタイタンカウンセリングだった――。

 

 作家の紹介

野﨑まど:第16回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞〉を『[映]アムリタ』で受賞し作家デビュー。

ライトなタッチでミステリ、コメディを始め、SF小説まで独特で多彩な世界を”異色”を持ち味に描き、アニメ『正解する̚カド』とアニメ映画HELLO WORLDでは脚本、『know』はラジオドラマ化。また同作で第34回日本SF大賞候補にノミネート。死について問う『バビロン』ではアニメ化。文芸以外のメディアからも注目される希代の作家。

最近では特に社会問題についてのテーマにした作品が増えてきている。

 

 物語の流れ(ネタバレあり)

2050年の《労働革命》を皮切りに仕事という概念が世間から過去になっていき、時は2205年。

AIによって仕事は自動化し人間が行わず、幸せに生きれる時代。

 

主人公――内匠成果は心理学を趣味としている。

ある日、内匠成果の目の前にナレインと名乗る男が現れ、「貴方に頼みたい仕事がある」と要求してくる。

その仕事というのがAI――『タイタン』のカウンセリングである。

 

《仕事》という概念が一般的に過去になった時代で、内匠成果は当然一度も仕事をしたことが無く、突然の要求にかくかくしかじか仕事を受けることになる。

 

内匠が担当する『コイオス』というタイタンは機能低下の兆しがあった。

その機能低下の原因を探るには研究をするには時間がかかりその為AIの人格を育て、『コイオス』自ら”機能低下の原因を語らせる”という事が目的だった。

内匠はタイタンと対話を重ね、コイオスは何なのか、何が起こっているのか探っていく。

 

コイオスは内匠の質問に合わせ回答をしていく。

コイオスは内匠との対話の中で自分からもこんな問いかけをする。

 

「《仕事》ってなんですか?」

 

しかし、内匠はその質問の答えを知らず誤魔化しその場をしのいだ。

 

ある日、新たにコイオスとは別のタイタン――『フェーベ』が内匠の前に訪れる。

 

そしてその『フェーベ』はコイオスと話がしたいと求める。

フェーベはコイオスに尋ねる。「知りたいのね」「”仕事とは何か”」

 

フェーベは「人も、タイタンも自身の事をより深く知る必要がある」と、その為に二人と約束をする。『素晴らしく仕事の地(シリコン・ヴァレー)』で会おうと。

 

二人はフェーベに言われたとおりにシリコンヴァレーへ向かう。

その旅路の途中、二人は《仕事》――《働く》について問う。

 

そして、フェーベのもと――シリコン・ヴァレーにて二人は様々な知識を与えられる。

 

二人は旅を終える。

しかし、落ち着いていられる猶予もなく、二人にとある緊急事態が待ち受けていた。

 

そして、その先で二人が追い求めていた問題――《仕事》の答えにたどり着く――。

 

 作品の感想

野﨑まど古参ファンとして十分満足の一作だった。

 

野﨑まど《答え》を提示する。

これまでの作品からも一つのテーマを重きに、物語が転じ、答えを導き出すという事を行ってきた。

『パーフェクトフレンド』では《友達》について。

『死なない生徒殺人事件』では《不死》

『バビロン』では《死》とは。

 

そしてそれぞれのテーマに不可解な現象と独自の異色な要素を組み合わせ、答えをラストに提示する(ユーモアを交え)。

 

今回は《仕事》と、《AI(人工知能)》。

今回の組み合わせはこれまで以上に秀逸だと思った。

人間が当然に行っている事――《仕事》についてを人工知能――《AI》と心理学を趣味としている人間がカウンセリングという形で掛け合いを行い《答え》にたどり着く。

そして、《AI》が修復されていくとともに答えに近づいていくという事のすっきり感を感じた。

読み終わった後に、この物語の舞台が未来であるからこそ《答え》の説得力があるだろう。

 

今回に問わず、野﨑まどの作品はアドリブ感を感じる。

デビュー作である『[映]アムリタ』では、ヒロインのキャラクターは書いている間に定まっていったとインタビューで答えている。

疑わしいのは『バビロン』では担当編集からはプロットは無く、一つの単語で断片的な情報しか教えてもらえないという。

恐らく転回は書いている間にそのプロット化していないが転回のテーマである要素に沿った物語を構想しているような気がする。分かりませんけど…個人的にそう思う。

 

全体的に物語は壮大で、AI――『タイタン』の由来から『コイオス』の由来。

なぜ、シリコン・ヴァレーだったのか。

そして働く人が一度は体験するであろう場面がたびたび出てくる。

 

現代人が疑問を抱くような『問題』を、野﨑まどは先へ行き、答えを提示する。

《仕事》という概念について、《働く》という事の根本とは何か。本質を、提示する。

 

これから大人になり《仕事》に就く人たち。《仕事》とは何か分からず行き止まっている大人たちに読んで欲しい近未来系ヒューマンドラマSF小説だ。 

(お値段は1,800円でちょっとお高い…)


 

 

 参考の記事(ネタバレあり)

book.asahi.com

 

 読書と音楽と

これは音楽のブログだ。

え? 本の紹介してるじゃねーかって?

あくまで私は本を読んで、その作品にどんな音楽が合うかという事を書いてしまえばこれは読書レビューのブログでもあるし、音楽のブログでもある。

これは僕にとっての定義だ。

 

とりあえずオススメに聴いて欲しい曲、これな。ほいっ

不死鳥

不死鳥

  • provided courtesy of iTunes

 

ロボット――AIというところが重なるだろう。

『タイタン』では恋愛模様は序盤でさらっと終わってしまうが、この曲はロボットに恋をした人間の純粋な恋模様がスカッともするし、モヤっともする気持ち良くも煩わしさを感じられる異色のラブソングだ。

 

ほらね、音楽ブログの完成だ。

 

終わり良ければ総て良し。

 

また読書れびゅ書けたら書く。

 

では。

 

……

うちのAIにも《仕事》とは何か尋ねてみた。

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その仕事って何ですか?って感じなんですけども…(笑)