⑥入門:米津玄師のジャンルとは? ロック? J-POP?~8thシングル:『Lemon』編~
こんばんわ、傍観梟(ぼうかんふくろう)です。
今回は、『diorama』から『BOOTLEG』そして、様々なシングルでの表現を通過した、その後の米津玄師さんの活動と音楽性の傾向、そして、『Lemon』をはじめとした楽曲について迫った話を個人的な見解で書いていきたいと思います。
『米津玄師のジャンルとは?』バックナンバー↓
ほいでは、本日も本日とて本題へ張り切って! どうぞっ!!!!!!
まず、『Lemon』について…
石原さとみさん主演、ドラマ『アンナチュラル』の主題歌で、2年弱を経てもなおラジオなどでたびたび流され続けるほどの大ヒットを記録し、現在ではYouTubeのMVの再生は5億を記録し、彼の代表曲になった『Lemon』。
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この楽曲を聴いたら、誰もがくぎ付けになり、米津玄師について知りたくなったことであろう。もともと知っていたファンも、もっと好きなったこと間違いないはずだ。
楽曲のテーマは、ドラマのテーマに合わせられて作られた。
歌詞は、喪失、心残り、敬愛…。メロディはバラード。
しかし、『Lemon』の制作過程には複雑な体験が重ねられ作られた。
それは、ドラマの主題歌の制作過程の間に、米津玄師自身の祖父が他界し、それまで先行して制作していた楽曲を作るのをやめ、新しく『Lemon』への制作に方向転換されたそうだ。
ドラマ『アンナチュラル』は人の”死”をテーマにした作品で、そのタイミングに米津自身の身近に起こった出来事により、ドラマのテーマという『ファンタジー』と現実での体験『リアル』が重なって作られた作品なのである。
~♪ 夢ならば どれほど良かったでしょう ~♪
歌は、低いピアノのメロディとともにこの歌い出しで始まる。
ゆったりと、そして、沈んでいくような始まり方。
米津玄師の曲の中で特に低音が音楽の世界観を撫でていて、これまで以上に万人に向けられた構成の楽曲であり、これまで以上に変質的な米津玄師の”クセ”が浮き彫りになり主張された楽曲である。
『Too Good At Goodbyes』との共通性
私はこの楽曲を初めて聴いた時、とある楽曲を連想した。
それは、イギリスのシンガーソングライター、Sam Smith(サムスミス)の2017年9月29日配信の『Too Good At Goodbyes』という楽曲である。
Sam Smith - Too Good At Goodbyes (Official Video)
この楽曲を聴いたとき、サムスミスの渾身のバラード曲だという事を感じたのを覚えている。サムの声”ファルセットボイス”が光り、全力のソウルが込められた楽曲。
この楽曲に共通するところが『Lemon』に幾つかある。
先に伝えておきますが、サムの曲の真似だなんだと騒ぎ立てたいわけではなく、傾倒を感じたというところ…。
その共通するところとは、歌とそれに合わせピアノの伴奏で始まるところ。
バラード。低音の強調。『別れ』と『別れ』。そして、印象的な『ウェっ』とギターの『歪み』。
ドラマのテーマという事もあり、人の『死』を主題にし、喪失から、悲しいという印象により、バラードにされることは無難な選曲である。そして見事に日本史上最大のヒットもした。
低音については暗いテーマであれば表現として妥当であり、『Lemon』以前にも『BOOTLEG』でさんざん多様をしている。
何よりバックのピアノとベースの低音に合わせ、シンセの、メロディを案内する細い高音が悲しいが光が差すような表現していて辛いことと人を思う明るい表現を両立していて歌詞の世界観にぴったりとはまっている。
『Too Good At Goodbyes』は、邦訳すると、『別れに慣れ過ぎて』という題になる。
『Lemon』は”思い人との別れ”がテーマになっている。
どちらも、別れがテーマで、別れを引きずっている。
沈んでいくメロディも相まって、リスナーの心に気持ちが落ちていくような、心残りのような感覚を覚えさせるのだ。それが、歌詞に従ったメロディになっており、ダイレクトに覚えやすくさせている。
そして、誰しもが、経験するであろう『別れ』という事がテーマという事により、共感を生んでいることがこの曲の一番の魅力であると梟(筆者)は思う。
人生で、一度は抱いたことは無いだろうか?
『夢ならばどれほど良かったでしょう』と。
例えば、あの時やっておけばよかった。たとえば、あの人に伝えておけばよかった。たとえば、たとえば……。
この共感性については、作詞家に置いて基本中の基本のスキルだとトップチャートに入ってくる様々な楽曲や根強いファンのいるアーティストを聴いてると思う。
シンプルで分かりやすい言葉と、感情を揺さぶる複雑な気持ちを表す言葉選びとこの後に書く”ウェっ”がこの楽曲を何より異質でありながらも万人にはまった正体なのだという事を。
『Lemon』を聴いたもの誰もが気になったはずだろう。
あの、”ウェっ”という音を。
この音は声ではないが、”ウェっ”という風に聴こえ、この楽曲の印象的なフレーズの一つだ。
この音は曲中何度も出てくる。
その部分というのが、殆どが、歌唱の語尾の直後だ。
この音が印象的である音ではあるが、何より音の配置に意味があると思っている。
米津玄師の楽曲は、再三説明していると思うが、BUMP OF CHICKENやRADWIMPSに影響を受けていた傾向が目立ち、その影響で特に気になるのが、音と音の”間”である。
特に、バンプに関しては、歌詞の羅列が長く、次に次にと聴きたい思わせる歌詞とメロディになっていて、更に演奏に関してはギターの印象的なフレーズが多数ある。
そのフレーズを入れることにより、楽曲を最初から最後まで飽きさせないという効果を生むのだ。
”ウェっ”にはその”間”をつなぐための役があり、この声みたいに聴こえるという事がこれまでの日本の音楽シーンでこんなに堂々と使用されることがなかったため、良い意味で”気持ち悪さ”、”違和感”という快感を生み出し、大ヒットを記録した理由の一つであると、一人のファンとして感じている。
もちろん、この”ウェっ”がなかったとしても、十分名曲と化すことができたと思うが、”ウェっ”という日本の音楽シーンにおいてこの”奇行”が必要だったと思うのだ。
何より、自分自身がボカロで音声を操っていたところから声のような”音”を使用することに至ったのだと、この音によりボカロP出身で、米津玄師の独自性らしい楽曲になったと感じる。
誰もが”ウェっ”に癖になって間違いがないのだ。誰だって、人の声に敏感なのだから。変化球過ぎる”声”っぽい”音”にだって敏感になるのだ。
そして、『Too Good At Goodbyes』にも、その間をつなぐ印象的なギターのカッティングの音がある。
それは『Lemon』とは異なり、一定の間隔で鳴り、楽曲を漠然としたバラードにさせず、聴かせる ”( ゚д゚)ハッ!” させる効果を生んでいて、こういうバランスをとることにより、聴いた者をリピーターにさせることが出来るのだと思う。
もちろん、サムスミスの歌唱力は抜群で聴いたものを魅了する魅力があるから、もしアカペラであろうと関係ないのだが。
この共通するところ説明したうえで、『Lemon』という楽曲のジャンルとは、何なのか。
サムスミスはソウル歌手である。『Too Good At Goodbyes』はソウル曲だ。彼の声がそうさせているし、楽曲の世界観がそうだ。願望、願い、祈り…そういう表現を強く感じるし、歌詞がそうだ。
しかし、自分は『Lemon』が共通点があると感じておきながら、まったく違うジャンルの印象を受けた。
アダルト・コンテンポラリー・ミュージックというジャンルをご存じだろうか?
僕が1年以上、『Lemon』という楽曲を聴くたびに感じていた上の空感があった。
”上の空感”と言っても、あまりにも漠然としていて、表現が難しいのだが、ざっくりというと、『Lemon』のリスナーとして聴いていて手の届かないような、でも、共感ができ、心を撫でられるようなメロディ。
その、”手の届かない”ような正体を自分は知りたかった。
ずっと考え、いろんな楽曲を聴き、気が付いた。
それは、簡単に言うと、子供から見た”大人”を見上げるような感覚。
『Lemon』に色っぽさ、ダンディさ、まさに”大人びた”表情が始めから終わりまで感じるのだ。
共感はしているが、なんだか近づき憎さを感じていた。まだ、近づき憎く、そんなおこがましく、『Lemon』が独走する世界に介入できないような”アダルト”さを、感じるのだ。
この、アダルト・コンテンポラリー・ミュージック(以下:AC)で有名なアーティストだと、ピアノマンの異名を持つ、Billy Joel(ビリージョエル)、Elton Jhon(エルトン・ジョン)だ。
そして、一番、傾倒としてマッチしているのではないかと思ったのが、
Lenny Kravitz(レニー・クラヴィッツ)のこの曲である。
Lenny Kravitz - I'll Be Waiting Official Video [HQ 480p]
聴いてみていかがだろうか?
この、AC内にもジャンルが分けられており、この楽曲はホット・アダルト・コンテンポラリーに含まれてくるのだ。
この楽曲は思い人に対して情熱的な感情を表現しており、そのカテゴライズになるのだろう。
どこか、遠くを見ており、音が少ないため、大人びた印象を受けた。
その為、私は『Lemon』をアダルト・コンテンポラリー・ミュージックだと感じている。
しかし、J-POPに変わりなく、しかし、フォークからは離れている音楽性であり、難しかった。バラード、という風にカテゴライズしても物足りないのだ。
その為、今回の結論に至った。
ホットか、プレーンなアダルトコンテンポラリーだと、個人的に感じている。
正解か否かはまた改めて調べまくって勉強して解剖をし続けたいと思っている。
『Lemon』と『歌謡曲』
また、米津玄師が『Lemon』を作る上で、小田和正、中島みゆき、そして、松任谷由美の日本の代表的なレジェンドの曲を聴いていたという事も語っている。
確かに『Lemon』にはその影響が大きくみられる。
歌い方、メロディの流れ方。
素朴そうで壮大な堂々としたテーマがその影響を感じる。
音楽性はニューミュージック、ポップミュージック。
『Lemon』には影響を受けているところが沢山感じられる。
世界観は『Lemon』の方が暗く、この楽曲は全体的に高い音が基軸になっていて明るい楽曲になっている。
そういう部分の吸収の仕方から、日本の歌手としてのこだわりなどを大切にし、様々な音楽に触れていく事をやめないという事が10年以上音楽を作っている米津玄師としての音楽家のプライドと音楽が好きという純粋さを感じた。
そういう、好きが高じた信念を持って、新しい音楽を開拓し、新しい音楽、まさにニューミュージックを開拓をし続けるアーティストは、やはりどの時代でもいるが、どのアーティストでもかっこよく、きらびやかに、綺麗に美しく、素晴らしいのだ。
つづき↓
前述しているすべては、あくまで個人的な見解であり、その考えを記したまでである。
ここまでシリーズ⑥記事目にしていうのもなんだが、正直なところ、この『Lemon』の事について深く追求し、印象の共有をはかりたかった。
そして、まだまだ、変化の続ける未アルバム収録の新譜たちの解説、考察、ジャンルの追及も書いていきたいと思う。
どれくらいの記事数になるのか分からないが、もうしばらく付き合っていただけると嬉しい。
それから、コメントの方も頂けると、もっと嬉しい。
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参考記事: